一言で言えば、殆ど他人でありました。しかし、その関係はおそらく彼によって定義付けられていたものであり、私が友人であろうとしても彼にとっては私は全くの他人であり、彼の人生において何の影響も与え得ることはなかったと思います。勿論私にとっては、私は彼の一番の理解者たろうと努力していましたし、今でもそれは変わりなく、過去の彼の言動から彼の本質についての追求を放棄することはありません。
彼は以前、私について何の前置きも無くこう言った事があります。「君が何者であろうと、僕には関係無い」
私は彼の、抽象的で難解な言動について、ある種の興味を感じていました。彼の言動は、物事の本質について何らかの理解を獲得した上での言動であったのかも知れない。そう感じていたのです。
彼は普段から、他者と自分について明確な区別を行っていました。そしてその境界線は、他人の持つ境界線以上に太く、堅固で、決して誰にも、私にさえも簡単に解させることはありませんでした。それ故、私は彼の一種の神秘性に対して明らかに惹かれていました。そして、それは私への挑戦であるかのように私を錯覚させ続けています。